健腸長寿③:腸のミクロの住人たち

肉眼では見えない腸にすむ小さな生き物の正体とは

 人が生きていくうえで大切な働きを担う腸。まさに私たちの健康の要と言える器官です。その腸に、非常に小さな住人がいることはご存じでしょうか。正体は、肉眼では見ることのできない細菌と呼ばれる生き物です。私たちの便を特殊な染色液で処理し、光学顕微鏡で観察すると、赤や青に染まっている細長い棒状や丸い形のものが見えますが、これらは全て腸にすむ細菌です。1個当たりの細菌の大きさは、およそ1マイクロメートル。定規の1目盛が1ミリメートルですから、その1/1000の大きさです。よく小さいことを表すときに「針の先ほど」といいます。この写真は、針の先に細菌をつけ、電子顕微鏡で撮影したものですが、このように3000倍に拡大してやっとその姿が確認できるほど細菌は小さいのです。

 この腸のミクロの住人は腸内細菌といい、互いに影響を及ぼし合いながらそれぞれ集団を作って生息しています。この集団は、あたかも色々な種類の植物が群生しているように見えることから、「腸内フローラ」と呼ばれています。

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便を顕微鏡で観察した写真
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木綿針に細菌をつけた写真

腸にはおよそ1000種類、数にして100兆個の菌がすみついている!

 人の腸にすむ細菌は、かつて数百種類といわれていましたが、解析技術の進歩により、今では約1000種類にものぼることがわかってきました。腸内細菌は、自分がすみやすい場所を選んで分布しています。人の消化管の中でも小腸下部から大腸は、内容物の通る速度がゆっくりで酸素がほとんど無いため、このような環境を好む細菌(嫌気性菌)が多くすみついています。

 これら多種多様な腸内細菌は、どのくらいの数になるのでしょうか?腸にすむ細菌は数にして約100兆個、これらをすべて並べると、地球2周半もの長さになるといわれています。また、便の約8割は水分ですが、水分を除くと1/3〜1/4は細菌というから驚きです。人間の体の細胞数は37兆個にのぼると見積もられていますが、それよりもはるかに多い細菌が、私たちの腸にいるとは本当に驚くべきことです。

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消化管各部位のフローラ

腸内細菌は、どこからやってくるのか?

 腸内細菌は、どこからやってきて私たちの腸にすみつくのでしょうか?人は、母親の胎内で無菌の状態で育ちますが、産道を通ったり、母親や周りの環境から細菌をもらい、それらが腸にすみつきフローラを形成すると考えられています。人が生きていくうえで大切な役割を担っている腸に、このような多種多様な腸内細菌がすみついているのですから、それが人の健康と密接に関わるのも当然のことと思いませんか。

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色々な腸内細菌