脳腸相関②:脳と対話する腸


CONTENTS - 目次

「腸」は単なる消化器官ではない

 腸は、食べ物を消化して、栄養素を吸収する場所であることから、消化器官として知られています。ところが、近年、腸は消化器官としての役割に加え、「免疫系」、「内分泌系」、「神経系」の働きが発達している重要な器官であることが明らかになってきました。

腸に備わる働き

①免疫系~人体最大の免疫器官~
 私たちの消化管は口から肛門までひと続きの筒状になっています。腸は体の中にありますが、その内側は外界に曝されており、実は内なる外と言えます。そのため、腸は食べ物だけでなく、細菌やウイルスなどのさまざまな病原体と常に接する場所として、さまざまなリスクに対応できる態勢がとられています。それが、免疫系です。腸には体全体の半数以上の免疫細胞が存在し、腸管免疫系という独自の免疫系が発達していることから、人体最大の免疫器官とも言われています。

②内分泌系~ホルモンの分泌~
 私たちの体内では、体のさまざまなはたらきを調節するホルモンという物質が分泌されています。ホルモンの分泌により、体の外や内でなんらかの変化が起きても、体の働きが常に同じになるように保たれています。
 腸には、このホルモンを分泌する腸管内分泌細胞という細胞が存在していて、内分泌器官としての役割も担っています。
 おなかが空いた、と私たちが感じる「空腹感」。この空腹という感覚は、腸から分泌される食欲を促すホルモンが「空腹だから何か食べて」という信号を脳に伝えることで起こります。

③神経系~自分で考えて、活動できる~
 腸には、思考を司る脳と同じように、入ってきた情報の処理と処理した情報を伝達する役割を担う神経細胞が存在すると言われています。その数は脳や脊髄に次いで多く、さまざまな種類の神経細胞が存在しています。
 腸にはこの神経細胞が網のように広がっており、腸管神経系と言われる独自の神経ネットワークが発達しています。そのため、脳の指令が無くても自分で考えて、自分で活動することができ、脳と同じように外部からの情報を処理し、伝達できると言われています。

脳と腸の情報交換

 以前から、脳は全身の機能を支配していると考えられ、腸との関係においても脳で感じた不安が腸に伝えられるという研究が行われていました。ところが、近年、腸には腸管神経系という独自の神経ネットワークが発達しており、感知したさまざまな情報を処理して脳へ伝達していることが分かってきました。つまり、脳と腸は情報を交換しあう、言い換えると、対話をしているのです。

 この脳と腸の情報交換は、免疫系、内分泌系、神経系という腸に備わる機能を介して行われています。特に、腸から脳への情報伝達のルートとして注目されているのが、「迷走神経」です。腸から脳への情報量は脳から腸よりも多いと考えられており、脳は腸から送られてくる情報に大きく影響を受けていると言えます。

 さらに最新の研究において、この腸から脳に送られる情報に、腸にすみつく微生物の存在が大きく影響を与えることも明らかになりつつあるのです。

脳と腸を結ぶ迷走神経