健腸長寿⑧:プロバイオティクスの臨床応用(後編)

プロバイオティクスによる目覚しい変化

 腸炎や敗血症を繰り返していた短腸症の女の子の腸内フローラバランスは、度重なる手術のストレスや感染症の治療で繰り返し投与されていた抗菌薬の影響で、有用菌のビフィズス菌が激減した、有害菌優勢の乱れた状態であることが分かりました。そこで担当医は、感染症の悪循環を断ち切るために、プロバイオティクスとして、L.カゼイ・シロタ株とB.ブレーベ・ヤクルト株を、有用菌のエサとなるガラクトオリゴ糖と一緒に投与する試みを開始しました。

 プロバイオティクスを投与し始めると、効果はすぐに表れました。投与前には2年間で10回以上も発症していた高熱というつらい症状が見られなくなりました。そして女の子の便を調べると、プロパイオティクス投与前にはほとんど見られなかった乳酸桿菌やビフィズス菌が、投与を始めて半年後には最優勢になっていました。一方、健康な子供では考えられないほど多かった有害菌のカンジタは1000分の1以下になっていたのです。

 プロバイオティクス投与を開始してから半年たった頃から、なかなか増えなかった体重がぐんぐん増加し、1年後には同年代の小児の標準体重に達しました。やがて普通の食事が摂れるようになり、栄養点滴のカテーテルも外されました。女の子は家族と一緒の食卓を囲み、普通の生活を送れるまで回復し、このような激的な変化に担当医も驚くほどでした。

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短腸症の女の子の症状を改善したプロバイオティクスの働きとは

 プロバイオティクスは、なぜこれほど女の子の症状を改善することができたのでしょうか。まず考えられるのは、腸内フローラのバランスが大きく改善したことです。プロバイオティクスと有用菌のエサとなるガラクトオリゴ糖の投与は、腸内の有用菌を増やし有害菌の増殖を抑え、腸内環境を改善し、女の子の腸は、短いながらも本来の機能を取り戻していったと考えられます。

 少しずつロから食べ物を摂れるようになると、腸の働きはさらに促進され、数か月後には腸からしっかり栄養がとれるようになりました。それが、プロバイオティクスの投与1年後の標準体重に達する結果につながったと考えられます。しかも、栄養点滴のカテーテルから解放されたことにより、敗血症の心配もなくなりました。腸炎や敗血症がおこらなければ、抗菌薬を使用する必要もありません。このことも腸内フロ一ラを安定させ、腸の機能の回復に寄与したと考えられるのです。

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腸の健康を改めて考えよう

 短腸症の女の子の症例を通して、腸の働きや腸内細菌との関係、それを改善するためにプロバイオティクスに何ができるのかをご紹介しました。この実例は、腸が生命の維持に重要な働きを担う器官であることや、腸にすむ多種多様な腸内細菌と人の共生関係を築くことの大切さを教えてくれたように思います。皆さんも、腸の働きに目をむけ、腸にすむ目に見えない小さな生き物たちとの関係をうまく築けているかどうか、今一度考えてみてはいかがでしょうか?