脳腸相関①:序章(ストレス社会の健康テーマ、脳腸相関)


CONTENTS - 目次

現代人の約半数が抱える「ストレス」

 経済が豊かになり、科学技術の進歩によってさまざまな面で便利な社会になった一方、現代は「ストレス社会」と言われています。
 厚生労働省の平成28年度国民生活基礎調査によると、男性の約4割、女性の約5割が何らかの悩みやストレスを抱えており、特に20~50歳代でその割合が高くなっています。

 現代人の約半数が抱えるストレス。そもそもストレスとは何でしょうか。
 ストレスとは、さまざまな外部刺激、あるいはそれにより生じる体や心の変化などを言います。

悩みやストレスがある人の割合のグラフ
年齢階級別にみた"悩み"や"ストレス"がある者の割合1)

 体や心にかかる外部刺激には、暑さや寒さ、騒音などの「物理的要因」や薬品や公害物質などの「化学的要因」、人間関係や仕事上の問題、家庭の問題などの「心理的・社会的要因」があります。なかでも多くの現代人を悩ませる外部刺激が、日常的に遭遇する心理的・社会的要因です。

ストレスが引き起こす体と心の不調

 緊張すると、ドキドキしたり、汗がでたりする経験はないですか?私たちは何らかの外部刺激を受けると、体と心に変化が生じます。この反応は、危険から身を守るための心身に起こる自然な防御反応ですが、より強い刺激を受けたり、ストレス状態が継続すると、睡眠の質の低下、頭痛や腹痛などの全身の不調につながる場合があります。 

 さらに慢性的なストレスは、過敏性腸症候群やうつ病などの発症につながることも知られています。近年、これらのストレスと関連の深い疾患の病態解明や治療法の研究が進むなかで、脳と腸の関係が注目されるようになりました。

ストレスで不調を感じている人の写真

腸から脳の状態を整える ―メンタルヘルスと脳腸相関―

 不安や緊張を感じると、おなかが痛くなりトイレに行きたくなる、また、新年度で職場やクラスが変わるなど環境が変わった時や旅行先で便秘を経験されたことのある方もいるのではないでしょうか。

 古くから、脳の状態が腸の機能に影響を及ぼすことは知られていましたが、近年、脳から腸への影響だけでなく、腸の状態のさまざまな変化が脳に伝わり、気分や感情という心の状態にも影響を及ぼすことが分かってきました。

 この脳と腸が互いに影響を及ぼし合う関係を「脳腸相関」と言います。ストレス社会と言われる今、メンタルヘルスを考えるうえで脳腸相関は注目すべき健康テーマといえます。


脳腸相関のイラスト

【参考文献】
 厚生労働省:平成28年国民生活基礎調査「年齢階級別にみた悩みやストレスがある者の割合」