アレルギー④:L.プランタルム YIT 0132の可能性(前編)


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季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)に対する有効性

 アレルギーのうち有症者の割合が高いスギ花粉症に着目し、L. プランタルムYIT 0132を含む乳酸菌発酵果汁飲料の有効性を検証しました。スギ花粉飛散時期(2月~4月)に花粉症症状を有する成人42名を、発酵果汁飲料または未発酵の果汁飲料(プラセボ)を飲むグループに分け、1日1本(100ml)、8週間飲用をしてもらいました。花粉症の自覚症状およびQOLについて、「日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票(JRQLQ No.1)」を基にしたアンケート調査を行い、評価しました。その結果、プラセボ群では花粉飛散期に鼻・目・皮膚のかゆみに関するスコアの平均値が上昇しましたが、発酵果汁飲料群では悪化の程度が緩やかに推移し(図1)、L. プランタルムYIT 0132を含む乳酸菌発酵果汁飲料の継続飲用が花粉飛散時期におけるスギ花粉症症状を軽減することが確認されました。


かゆみスコアの経時変化のグラフ
図1 かゆみスコアの経時変化1)

通年性アレルギー性鼻炎に対する有効性

 次に、発酵果汁飲料の飲用が、通年性アレルギー性鼻炎に及ぼす影響を検証しました。年間を通じてアレルギー性の鼻炎症状を自覚する成人33名を発酵果汁飲料または未発酵の果汁飲料(プラセボ)を飲むグループに分け、1日1本、8週間飲用してもらい、飲用前、飲用8週間後の鼻炎症状を調べました。
 その結果、発酵果汁飲料群では、プラセボ群に比べて鼻症状スコアが改善しました(図2)。また、発酵果汁飲料群では、アレルギーに関連する血液マーカーである総IgE、Th2、ECPの値が飲用前と比較して飲用8週間後に減少しました。このことから、L. プランタルムYIT 0132を含む乳酸菌発酵果汁飲料の飲用により、通年性アレルギー性鼻炎の症状が改善したと考えられました。
 ※ECP:好酸球の産生する炎症性物質


鼻症状スコアの前観察期からの変化量のグラフ
図2 鼻症状スコアの前観察期からの変化量2)

免疫系にはたらきかけるしくみ

 発酵果汁飲料の継続飲用がアレルギー性鼻炎症状を軽減するしくみを明らかにするため、アレルギーに関連する血液マーカーに及ぼす影響について調べました。
 スギ花粉飛散時期(2月~4月)に花粉症自覚症状を有する成人100名を、発酵果汁飲料またはプラセボを飲むグループに分け、1日1本、8週間飲用してもらいました。上記と同様にアンケート調査を行い、アレルギー関連の血液マーカーも併せて測定しました。
 解析の結果、発酵果汁飲料群ではプラセボ群に比べて総合鼻症状スコアが有意に低くなり、スギ花粉症症状の軽減効果が確認されました。
 血液マーカーを調べたところ、プラセボ群では、花粉飛散時(飲用期間中)に飲用前と比較して制御性T細胞(Treg)値が有意に減少しました。一方、発酵果汁飲料群ではプラセボ群に比べて飲用期間中におけるTregの割合が有意に高く、Tregの減少が抑制されました。この結果は、プラセボ群で認められた花粉飛散に伴うTregの減少が、発酵果汁飲料の継続飲用により抑制されたことを示すものと考えられます。また、発酵果汁飲料群では、飲用期間中にTregが増加した人ほど鼻症状の悪化が抑えられており、本飲料の飲用によるTregの変化が花粉症症状の改善に重要であると考えられました。
 また上記の被験者100名のうち、機能性表示食品の届出等に関するガイドラインに定められた健常者および軽症者93名について、取得済みデータを再解析した場合にも同様に、スギ花粉症症状の軽減効果(図3)、およびTregの減少抑制(図4)が認められました。

総合鼻症状スコアの経時変化のグラフ
図3 総合鼻症状スコアの経時変化3)
飲用前・中・後のTregの変化のグラフ
図4 Tregの変化3)

【参考文献】
 1) Harima-Mizusawa N et. al. "Beneficial Effects of Citrus Juice Fermented with Lactobacillus plantarum YIT 0132 on Japanese Cedar Pollinosis." Biosci Microbiota Food Health. 2014,33(4),147-155.
 2) Harima-Mizusawa N et.al. "Citrus juice fermented with Lactobacillus plantarum YIT 0132 alleviates symptoms of perennial allergic rhinitis in a double-blind, placebo-controlled trial." Benef Microbes. 2016,7(5),649-658.
 3) 久保田憲広ら 「温州みかん発酵果汁飲料の継続摂取が花粉症症状およびQOLに及ぼす効果―ランダム化二重盲検プラセボ対照群間並行試験の再解析―」薬理と治療. 2021,49(9),1439-1453.