アレルギー③:免疫のバランスを整える乳酸菌への期待


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アレルギーが引き起こされるしくみ

 アレルギーは、本来私たちの体を守るしくみである免疫系の過剰な反応によって引き起こされます。免疫系の中でも特にTh2細胞と呼ばれる免疫細胞がアレルギーの発症にかかわっています。Th2細胞は、異物を排除するための抗体をB細胞と呼ばれる免疫細胞に作らせる役割を担っています。免疫細胞にはいろいろな種類があり、それぞれの細胞のはたらきの強さがバランスの良い状態にあることで、免疫系は正常にはたらきます。しかし、そのバランスが崩れ、花粉やホコリ、ハウスダストなどのアレルゲンに対するTh2細胞の免疫反応が過剰な状態になるとアレルギーを起こします。Th2細胞からのはたらきかけでB細胞がつくる過剰なIgE抗体が引き金となり、アレルギーの症状が引き起こされます。

免疫のバランス

アレルギーをおさえる制御性T細胞のはたらき

 免疫細胞の一種である制御性T細胞(Treg)は、免疫バランスを整え、過剰なアレルギー反応や炎症反応を抑える機能を持つことが知られています。アレルギー症状のある人ではTregの減少や機能の衰えなどが認められることから、免疫バランスの調整やTregの機能回復により、アレルギー症状を軽減できることが期待されます。Tregを活性化することで炎症・自己免疫応答を抑制する役割を担っているのがインターロイキン10(IL-10)などのサイトカイン※1です。
 ※1 サイトカイン:免疫細胞から分泌される低分子のタンパク質

免疫のバランスを整える乳酸菌への期待と課題

 乳酸菌飲料、ヨーグルトなど、発酵乳製品に使用される乳酸菌の中には、免疫のバランスを整えることにより、アレルギー症状を軽減する効果を示すものがあることが知られています。
 乳酸菌を用いて製造される乳酸菌飲料、ヨーグルトなどの発酵乳製品の多くは、アレルゲンの一つである乳を原料としています。乳アレルギー体質の人では、乳製品の摂取そのものがアレルギー発症の原因になってしまいます。そのため、乳酸菌でアレルギー症状を抑える機能が期待できるとしても、その製品に乳が含まれていると、乳アレルギーの方は摂取することができない場合があります。また、乳酸菌の中には、乳以外の原料では乳に比べて発酵が弱かったり、風味が良くなかったりと、その能力を十分に生かせないものもあります。

アレルギー症状の軽減が期待できる乳酸菌の探索と応用

 ヤクルト本社では、免疫のバランスを整えることでアレルギーの症状の軽減が期待でき、かつ、乳以外の原料とも相性の良い乳酸菌を探しました。ヤクルト本社中央研究所が保有する数多くの菌の中から、免疫細胞からのIL-10の産生を促す能力が高い乳酸菌として、ラクトバチルス プランタルム※2 YIT 0132(以下、L. プランタルム YIT 0132)が選び出されました。また、アレルギー特定原材料以外の各種素材での発酵性を調べ、L. プランタルム YIT 0132の増殖性が良かった柑橘果汁に着目し、柑橘果汁をL. プランタルム YIT 0132で発酵させた乳酸菌発酵果汁飲料でアレルギー症状軽減作用を調べました。
 ※2 現在は、ラクチプランチバチルス プランタルムに分類されています。

L. プランタルム YIT 0132の写真
L. プランタルム YIT 0132

 次の章から、乳酸菌発酵果汁飲料のアレルギー軽減に対する可能について解説します。