食後の血糖値対策の重要性①


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気をつけよう!肥満とメタボリックシンドローム

 近年、食生活の欧米化や運動不足による肥満が問題となっています。平成27年の国民健康・栄養調査1)によると、肥満者の割合は女性で19.2%、男性では29.5%と報告されています。特に男性の肥満の増加率は、近年は横ばいであるものの、40年前と比較すると約2倍になっており、肥満対策は深刻な状況が続いています。

 一般に、肥満の判定には、国際的な指標として「BMI(ボディ・マス・インデックス)」が用いられます。これは、体重(kg)/身長(m)2という計算式で求めることができ、例えば、体重70kg・身長170cmの人のBMIは、24.22(70÷1.72=24.22)となります。

メタボリックシンドロームのイラスト

 日本肥満学会による肥満の判定基準2)では、BMIが22になる体重を標準体重とし、BMIが25以上を肥満としています。肥満には「内臓脂肪型」と「皮下脂肪型」の2タイプがあり、同じBMIでも前者の方が病気につながるリスクが高くなります。内臓脂肪型肥満を反映する腹囲が、男性で85cm、女性90cm以上であることに加え、血糖、血圧、血清脂質のうち2項目以上が基準値を外れると、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)と診断されます。そして前述の腹囲に加え、1項目のみが該当する場合はメタボ予備軍となります。メタボリックシンドロームでは、それぞれの項目の異常が軽度であっても複数組み合わさることで、心筋梗塞や脳卒中などの命に関わる病気になるリスクが格段に高くなります。

糖尿病がもたらす様々な合併症

 肥満との関係で特に注意が必要なのが「糖尿病」です。糖尿病はすい臓から分泌される血糖値を下げるインスリンというホルモンの分泌不足、またはその作用が現れにくいために、血糖値が高くなる病気です。糖尿病は自覚症状もなく、いつの間にか発症・進行しているため、とてもやっかいな病気です。血糖値の高い状態が続くと、体に負担がかかり、やがて数々の合併症を発症します。糖尿病の合併症は、毛細血管などの細い血管に生じる細小血管障害と太い血管に生じる大血管障害に分けることができます。前者には、腎症、網膜症および神経障害といった3大合併症が含まれます。重篤化すると、失明や血液透析が必要となる場合があり、QOLを大きく損なう危険性があります。一方、大血管障害には、心筋梗塞、脳卒中などの命に関わる病気があります。
 大血管障害を発症する危険性は、糖尿病と診断される以前の予備軍の段階から高まることが知られています。この原因は、食後の血糖値の上昇で、「食後高血糖」と呼ばれる状態が関係します。健康な人では、食後血糖値が140 mg/dlを超えて上昇することはほとんどなく、食後2時間から3時間後には食前の血糖値に戻ります。しかし、糖尿病患者だけではなく予備軍のなかにも、インスリンの分泌が遅れたり、作用が現れにくかったりすると、食後2時間後においても血糖値が140 mg/dlを超えてしまう方がいます。
 国際糖尿病連合は、このような状態を食後高血糖と定義し、大血管障害のリスクを高めることから改善の重要性を訴えています3)。糖尿病患者や糖尿病予備軍、食後高血糖が増加している背景には、肥満や過食、運動不足などがあると考えられています。糖尿病やその合併症を予防するためには、食習慣や運動習慣の見直しが重要です。

【出典】
 1) 厚生労働省「平成27年国民健康・栄養調査結果の概要」
 2) 日本肥満学会「肥満症診断基準2011」
 3) 国際糖尿病連合「食後血糖値の管理に関するガイドライン」