高齢者の健康管理②:プロバイオティクスの新たな可能性


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高齢者の健康管理におけるプロバイオティクスの可能性

 高齢者は加齢に伴うさまざまな機能低下により、前話で紹介した体重減少だけでなく、便秘や感染症に罹患しやすいなどの問題が起こります。
 このようなさまざまな健康問題を抱える高齢者の健康維持に役立つ可能性があるとして注目されているのが、乳酸菌やビフィズス菌など、宿主に有益な作用をもたらす生きた微生物である「プロバイオティクス」の活用です。
 これまでに高齢者におけるプロバイオティクスの摂取が、整腸作用、免疫調節作用、感染防御作用などを示すことが明らかとなっており、高齢者の健康管理や生活の質(QOL)向上に役立つ可能性が示唆されています。

高齢者の健康管理におけるプロバイオティクスの可能性

 これら試験のプロバイオティクスの摂取期間は、長くても1年程度です。今回、プロバイオティクスを20年以上継続摂取している高齢者に関して、健康管理に役立つ可能性が示唆された研究成果が報告されましたので紹介します。

L.カゼイ・シロタ株の長期摂取で高齢者の体重減少を抑制

 1994~2003年に国の「がん克服新10か年戦略」の一環としてL.カゼイ・シロタ株の生菌製剤を用いた大腸がんの発症リスク低減に関する臨床試験が行われました。この試験の参加者で希望者は、試験終了後もL.カゼイ・シロタ株の生菌製剤を継続して摂取しています。
 今回、先の試験を完遂した380名を対象に新たな研究への参加を呼びかけ、同意が得られた237名(平均年齢約74歳)について、先の試験から通算して約20年の経過観察期間の情報を収集し、がんの発症、服薬、運動習慣、体重などについてL.カゼイ・シロタ株の長期摂取による影響を調べました(L.カゼイ・シロタ株継続摂取群 128名、非継続摂取群 109名)。

 解析の結果、L.カゼイ・シロタ株の継続摂取の有無による発がん状況、服薬、運動習慣において有意な差はみられませんでした。
 しかし、体重に関して、先の試験参加時と、その約20年後となる今回のデータを解析したところ、L.カゼイ・シロタ株継続摂取群、非継続摂取群ともに約20年の経過で体重は有意に減少しましたが、非継続摂取群では2.8kg減少したのに対し、継続摂取群では1.4kgの減少にとどまっていました。このことから、L.カゼイ・シロタ株の長期継続摂取により体重減少の程度が抑制されたことが確認されました。

L.カゼイ・シロタ株の長期摂取で高齢者の体重減少を抑制

まとめ

 加齢に伴う機能低下により、健康問題が生じやすい高齢者。超高齢社会を迎えた今、高齢者の健康管理の重要性が高まっています。
 中でも高齢者の体重減少(やせ)はフレイルをはじめ、さまざまな疾病リスクとの関連があるとされ、高齢者の健康管理において体重管理は重要といえます。
 この度L.カゼイ・シロタ株の長期摂取により高齢者の体重減少を抑制することが確認され、高齢者の健康管理に役立つ可能性がまた一つ見出されました。
 明るくすこやかな毎日を送るために、食生活に手軽に取り入れることのできるプロバイオティクスを利用してみてはいかがでしょうか。

【出典】
M. Mutoh, et al., Nutrients. 12, 1599 (2020)