腸内フローラ②:腸内フローラと健康との関わり

疾病だけでなく健康の維持・増進に関与する腸内フローラ

 以前から、腸内フローラが私たちの消化吸収や免疫機能に関与していることが明らかにされていましたが、解析技術の進展により、腸内フローラは、がん、糖尿病、うつ病、認知症、アレルギー、肥満、美容、アンチエイジングなど、これまで想像もつかなかったさまざまな研究領域で、ヒトの健康に深く関っていることが解明されはじめています。ここではいくつかの報告例をご紹介します。

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太っているのは腸内フローラのせい?

 2006年、アメリカのワシントン大学のジェフリー・ゴードン博士らは、腸内フローラが肥満に影響することを総合科学雑誌「nature」に報告しました。それは、無菌のマウスに肥満の人の腸内フローラを移植すると、マウスが肥満化するという研究です。肥満の人の腸内フローラには「バクテロイデテス門」に属する腸内細菌が少ないことが分かりました。
 バクテロイデテス門の菌が作り出す短鎖脂肪酸は、脂肪細胞の脂肪の取り込みを抑え、余分な脂肪の蓄積を抑える働きがあります。ゴードン博士らの論文には、バクテロイデテス門に属する細菌が肥満を防ぐ可能性のある腸内細菌として報告されています。

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性格(活発か臆病か)も腸内フローラが決めている?

 性格も腸内フローラと関連がある可能性があります。活発な性格のマウスは、台の上に乗せるとすぐに降りるのに対し、臆病なマウスはなかなか降りることができません。
 カナダのマクスター大学のプレミシル・ベルチック博士は、2匹のマウスの腸内フローラの違いを発見し、活発なマウスの腸内フローラを臆病なマウスに移植すると、警戒心が下がり、台から早く降りられるようになり、一方臆病なマウスの腸内フローラを移植された活発なマウスは警戒心が高まり、台から降りるのに時間がかかるようになったというのです。この結果は、消化器専門誌「Gastroenterology」で発表されました。

がんなどの疾病発症にも関わっている?

 がん研究会有明病院の原 英二博士らは、患者や検診に来たヒトから便を集め、腸内フローラを調べた結果、がんを引き起こす新種の腸内細菌を発見しました。病院の名前から「アリアケ菌」と名付けられたこの菌は、二次胆汁酸の一種であるデオキシコール酸(DCA)を作り出します。DCAはヒトの細胞に作用して細胞老化を引き起こし、この老化した細胞が発がん物質をまき散らし、周囲にがんを発症させるのです。この研究は科学雑誌「Science」で2013年の最重要論文に取り上げられ、世界中の注目を集めました。

【出典】
・Nature 444, 1027-1031 (2006)
・Science 499, 97-101 (2013)
・Gastroenterology 141, 599-609 (2011)