高齢者の健康管理①:高齢者における体重管理の重要性


CONTENTS - 目次

はじめに

 日本は急速に少子高齢化が進展し、今や超高齢社会を迎えています。
 日本人の平均寿命は年々延びる一方、今後、健康上の問題をかかえて過ごす期間も延びることが予想されています。
 「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」とされる健康寿命を延伸し、不健康な期間を短くすることは、生活の質(Quality Of Life, QOL)の低下防止や社会的負担の軽減という点から重要課題として、国の政策の一つとして取り組まれています。
 そして、近年、健康寿命の延伸の観点から、高齢者の健康管理の重要性が増しています。

はじめに

高齢者の体重減少(やせ)のリスク

 高齢者の健康管理において、体重の変化はバイタルサイン(生命兆候)のひとつです。
 高齢者は、加齢に伴う身体的機能(咀嚼嚥下機能、味覚感受性、消化機能など)の低下や生活環境、精神的要因などが重なると、食欲低下や食事量の減少などを招いて体重が減少しやすくなります。
 健康維持のうえで肥満を防ぐという考えは一般的に広まっていますが、近年は高齢者の体重減少は健康リスクとなることが分かってきており、高齢者の体重減少を予防することの重要性が高まっています。
 では、高齢者における体重減少にはどのようなリスクがあるのでしょうか。
 高齢者の体重減少は基礎疾患の増悪因子となることや感染に対する免疫力の低下、筋肉量・筋力の低下(サルコペニア)などにつながると言われています。さらに、体重減少はフレイル※の主要な要因でもあり、日常生活度(Activities of Daily Living, ADL)やQOLを低下させ、要介護のリスクとなります。

 また、死亡リスクとの関連も報告されています。やせや肥満の判定に用いられる国際的な指標にBMIがあります。日本ではBMIが18.5未満は「低体重(やせ)」、18.5以上25未満は「普通体重」、25以上が「肥満」と基準が定められています。
 左のグラフは高齢者(65~79歳)のBMIと全死因死亡率を示したもので、高齢者では肥満よりもやせの方が男女ともに総死亡リスクが高まることが報告されています。
 さらに最近では、やせている高齢者は標準体重(BMI18.5~25未満)の人に比べて、認知症にかかるリスクが高いことが報告されました。
 このように、高齢者の体重減少はADLやQOLの低下、フレイルやさまざまな疾患のリスクにもつながることから、高齢者における体重管理は重要といえます。

高齢者のBMIと全死因死亡率

※フレイルとは
「要介護状態に至る前段階として位置づけられているが、身体的脆弱性のみならず精神・心理的脆弱性や社会的脆弱性などの多面的な問題を抱えやすく、自立障害や死亡を含む健康障害を招きやすいハイリスク状態を意味する」とされています。

【出典】
A. Tamakoshi, et al., Obesity.18, p362-3691(2010)

【参考】
「フレイル診療ガイド2018年版」日本老年医学会/国立長寿医療センター、2018
公益財団法人長寿科学振興財団「健康長寿ネット」