免疫②:さまざまな要因で低下するNK活性
NK活性を低下させるさまざまな要因
がん細胞やウイルスに感染した細胞を攻撃するNK細胞の強さはNK活性と呼ばれ、免疫機能の指標のひとつとされています。このNK活性はさまざまな要因によって大きく影響を受けることが知られています。そのひとつが、「加齢」です。35才以下および60才以上の人のNK活性を調べ、比較したところ、60才以上の人たちは、35才以下の人たちに比べ、NK活性が低いとの報告があります。
そして、喫煙や偏った食生活、睡眠不足、ストレス、過度な飲酒などの悪い「生活習慣」もNK活性を低下させると言われています。
ある調査で、図1の生活習慣チェックに基づいて、生活習慣レベルを「良好、普通、不良」の3つのグループに分けてNK活性を比較しました。その結果、良好なグループは不良なグループに比べ、NK活性が1.7倍高いことが明らかになっています(図2)。
NK活性の強さと発がんリスクの関係
さまざまな要因で変化するNK活性ですが、その強さが発がんリスクと関連性のある事がわかりました。ある調査によると、埼玉県内の40~80歳の男女約3500人をNK活性の強さで高・中・低の3つに分け、それぞれのグループでのがん発症の有無を11年間に渡って調べました。すると、男女ともにNK活性の低いグループは高・中グループに比べ明らかに発がん率が高く、男性で1.7倍、女性で約2倍もがんに罹りやすいという結果が得られました2)。さらに、別の報告ではNK活性の高い人は風邪に罹りにくい傾向にあることも指摘されています。
NK活性を高めるために
それでは、NK活性を高めるためにはどうしたら良いのでしょうか?それは、生活習慣を見直すことからはじめるとよいでしょう。例えば「質の良い睡眠をとる・無理のない適度な運動をする・喫煙を控え、飲酒は適度に」など、まずはできることから取り組んでみてはいかがでしょうか。そして、もう一点、「乳酸菌」を摂取することもNK活性回復に役立つことがわかってきました。乳酸菌とは「乳糖やブドウ糖を分解して大量の乳酸をつくる細菌」の総称で、体に良い影響を与えることから「善玉菌」とも呼ばれています。これまでの研究の結果から乳酸菌の中にはNK活性を高める効果を持つものが報告され、手軽に生活習慣にプラスできるものとして注目されています。
【参考文献】
1) K. Morimoto et al. Lifestyles and mental health status are associated withnatural killer cell and lymphokine-activated killer cellactivities. Sci. Total Environ. 2001, 270, 3-11.
2) K. Imai et al. Natural cytotoxic activity of peripheral-blood lymphocytes and cancer incidence: an 11-year follow-up study of a general population. The LANCET, 2000, 356(9244), 1795-1799.