レンチラクトバチルス キソネンシス
学名 | Lentilactobacillus kisonensis |
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分類 | Bacillota 門 Bacilli 綱 Lactobacillales 目 Lactobacillaceae 科 |
形状 | 桿菌 |
分布 | 長野県木曽地方の無塩発酵漬物「すんき」 |
発見 | 2009年 |
発見者 | 渡辺ら(ヤクルト中央研究所) |
長野県木曽地方の伝統的な漬物「すんき」
一般的な漬物は食塩を用いて腐敗菌や雑菌の繁殖を抑制するとともに、耐塩性の乳酸菌による乳酸発酵によって、pHの低下と独特の風味が醸し出されています。
しかし、木曽の地方は海から遠い山国であるため、「米は貸しても塩は貸せるな」という言葉が存在するくらい塩がとても貴重品でした。そのため、野菜の保存に食塩をふんだんに使用することは困難であり、無塩の発酵漬物「すんき」が生まれたと言われています。
「すんき」は、木曽の御岳山麓で栽培される赤カブを水洗いした後に、沸騰した湯に10秒くらい浸して(湯通し)から樽や桶に詰めて自然発酵させて作られます。昔は、山なし、コナシ、山ブドウ、ズミなどの実のしぼり汁を発酵のスターターにしたとされていますが、現在では乾燥させた「すんき」や冷凍保存したものがスターターとして利用されています。「湯通し」でも赤カブに付着した乳酸菌は死なずに発酵の主役を担っています。
「すんき」から分離された乳酸菌
これまでの研究で、「すんき」の発酵には L. プランタルム、L. ファーメンタム、L. デルブリッキィ、L. パラブクネリなどが関与していることが報告されていましたが、詳細な研究はありませんでした。そこで、2004年に、培養法と分子生物学的な手法を用いた詳細な解析によって「すんき」の発酵には20種類以上にも及ぶ非常に多様な乳酸菌が関与していることがわかりました。また、その中から既知の菌種には当てはまらない4種類の乳酸菌がヤクルト中央研究所の渡辺らによって発見されました。渡辺らは、第1番目と第2番目の菌種に、分離源の「すんき」が採れた場所の「木曽」および「王滝村」を意味するラテン語から、それぞれ「キソネンシス」と「オータキエンシス」と名付けました。そして、第3番目は「すんき」の材料「カブ」を意味するラテン語の「ラピ」から、第4番目の「スンキイ」は、分離源「すんき」そのものを意味するラテン語からそれぞれ命名し、2009年に正式発表しました。
これら4菌種の菌形態は非常に似ているため、容易に識別することはできませんが、「キソネンシス」と「ラピ」は発酵によって産生する乳酸のほとんどがL-乳酸であるのに対し、「オータキエンシス」と「スンキイ」はそのほとんどがD-乳酸であるという違いがあります。また「キソネンシス」はブドウ糖や果糖を利用できない性質によって「ラピ」と識別できる一方、「オータキエンシス」は、ショ糖やラフィノースを利用できない性質が「スンキイ」と異なります。これら4菌種の性質の違いが、「すんき」の発酵にどのように関わっているか興味深いところです。
(2023年6月時点)
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