菌の図鑑

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フソバクテリウム バリウム

フソバクテリウム バリウム
学名 Fusobacterium varium
分類 Fusobacteriota 門 Fusobacteriia 綱
Fusobacteriales 目 Fusobacteriaceae 科
形状 桿菌
分布 腸内、創傷部、副鼻腔、腹膜炎など
発見 1933年
発見者 エーガスとギャニオン

菌の特徴

 1933年にエーガスとギャニオンがヒト糞便からバクテロイデス バリウスを発見しました。その後、さまざまな名称がこの菌に適用され、1969年ムーアとホールドマンによりフソバクテリウム バリウムと命名されて現在に至ります。この菌は、菌体の大きさが0.3~0.7×0.2~2.0マイクロメートルの嫌気性紡錘状のグラム陰性桿菌で、芽胞を作らず、運動性を持ちません。腸内発酵により代謝産物として高濃度の酪酸を産生します。

潰瘍性大腸炎の原因菌?

 潰瘍性大腸炎(UC)は大腸の粘膜に潰瘍やびらんができる病因不明の疾患で、症状が改善する緩解期と症状が悪化する再燃期を繰り返しやすいという特徴があります。近年では、食生活の変化や宿主免疫の機能異常だけでなく、組織の深部に侵入している細菌がその発症要因として推定されています。このフソバクテリウム バリウムもそのような視点から研究されている細菌です。酪酸は一般的には腸上皮細胞のエネルギー源と考えられていますが、一方で、この菌が産生する酪酸は細胞に毒性を示す実験結果も報告されています。また、この菌が産生した酪酸を腸内に注入することにより、マウスにUC類似病変が引き起こされることも確認されています。さらに、この菌は粘膜からIL-8やTNF-αをはじめとした炎症性サイトカイン産生を引き起こすことも報告されています。現在、UCの根治的治療法は確立されていませんが、フソバクテリウム バリウムに効果があると見込まれた3種の抗菌薬(アモキシリン、テトラサイクリン、メトロニダゾール:ATM療法)を組み合わせてUC患者に投与したところ、症状や内視鏡像の改善、再発の抑制が認められた報告もあります。

出典

 竹田美文、林英生 『細菌学』朝倉書店2002年.
 Bergey's Manual of Systematics of Bacteria Vol.1.
 大草敏史 腸内細菌学会誌27:169-179.(2013).
 大草敏史 モダンメディア「腸内細菌叢」60(11):325-329.(2014).

(2023年6月時点)

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