がん幹細胞は"がんの親玉"とも呼ばれ、がんの形成・成長に重要な役割を果たすだけでなく、転移・再発にも深く関与すると考えられている、がんの大もとの細胞です。

　組織を形成する細胞へと多様に分化する幹細胞は、生命維持にも不可欠な、まさに幹となる細胞です。しかしがん幹細胞は、(1)自分のコピーをつくる、(2)分化する、(3)薬剤を細胞の外へ汲み出す、(4)通常は静止期にあり、増殖期に作用する抗がん剤が効きにくい、など幹細胞がもつ機能を駆使して抗がん剤耐性を示しながら、さまざまな顔つきの"子分"がん細胞へと分化し、がんを不均一な細胞集団（組織）へと成長させます。

　がんの大半を占める分化したがん細胞が抗がん剤により消滅する中、治療後も生き残るごく一部のがん幹細胞がその後の転移・再発に深く関与すると考えられるため、がん根治を目指した治療法を開発する上で、がん幹細胞は重要な標的の1つとなっています。

（2023年4月時点）