パイエル板
パイエル板(Peyer's patch)は、小腸に存在し、多くの免疫細胞が集まるドーム状の免疫器官です。パイエル板を腸の管腔側から観察すると、その表面は小腸絨毛や粘液といった物理的バリアが薄くなっているため、腸管内の抗原(細菌や未消化の食物等の外来異物)が体内に侵入する入り口になっています。
パイエル板の表面にはM細胞と呼ばれる細胞が待機し、抗原をパイエル板内部に取り込みます。パイエル板内部に控える樹状細胞は取り込まれた抗原を分解してT細胞に抗原の情報を提示します。抗原情報を受け取ったT細胞によって活性化されたB細胞は主に粘膜免疫に重要な抗体である免疫グロブリンA(IgA)を作る細胞へと分化します。
M細胞やパイエル板を欠損させたマウスでは、腸管や糞便中のIgAの量が減少するため、病原体を排除する能力が低下し、感染症に罹患しやすくなります。
したがって、パイエル板は腸管免疫において重要な役割を果たすだけでなく、健康を保つうえで重要なリンパ組織だといえます。
【参考文献】
1. Urs M Mörbe et.al. Human gut-associated lymphoid tissues (GALT); diversity, structure, and function. Mucosal Immunol. 2021 Jul;14(4):793-802
2. D Rios et.al. Antigen sampling by intestinal M cells is the principal pathway initiating mucosal IgA production to commensal enteric bacteria. Mucosal Immunol. 2016 Jul; 9(4): 907-916.
3. Obata,T et.al Indigenous opportunistic bacteria inhabit mammalian gut-associated lymphoid tissues and share a mucosal antibody-mediated symbiosis. Proc Natl Acad Sci U S A. 2010 Apr 20;107(16):7419-24.
(2023年4月時点)
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